火曜日, 10月 26

藤子F全集・ドラえもん 第10巻

少年エースUCエース立ち読みの代償として、D書店で購入。

楽天ブックスのブログキャンペーン応募も、やはり最後はこれでシメるか…カテゴリは当然、①この秋読んだイチオシ本・漫画ね。“イチオシ”というのもまんざら誇張ではなく、いま唐突に思いついた「マンガはドラえもんに始まり、ドラえもんで終わる」というフレーズは、あながち間違いでもないかと。

兄弟シール
てんとう虫コミックスに収録されたのは、かなり後になってからだと記憶しているが、かなり古いエピソードだったんだな。しかしリテイクされたコミックス版のほうが、旧版よりも作画劣化している(←やけにスマートなジャイアンは、子供心にも違和感ありありだった)というのはどうよ!?

はるかぜうちわ
冒頭の“春の足音”のシュールさに噴いた(←宇宙家族カールビンソンかよ!)。ずっと扇ぎ続けなければ効果が失われるとか、季節カンヅメよりも不便だな。ほかにも今巻の収録作では、税金鳥よりもAIが柔軟性に欠けるむりやり貯金箱とか、どこでも大砲よりも迷惑なばくはつこしょう(←つーか、この手の道具はどこでもドアがFAだしなぁ)など、昔の作品より使い勝手の悪い道具が多いような…。

サウンドカメラ
これに近いことぐらいなら、もうすぐ実現できそうだな…とか思ってたら、オチの下品さが不意打ちだった(笑)。上流に住む者はマナーを忘れちゃイカンね。

コース決定機
未読だったけど、これはいい道具。とりあえず台風は全て、中国か朝鮮半島行きでよろしく(笑)。

木の葉でお買い物
夢のような道具も、何らかの弊害をもたらすことがある…というリアルな問題を突きつける、珍しいタイプの作品。

乗り物アクセサリー
しあわせをよぶ青い鳥

こういう駄洒落オチを読むと「ああ、いいアイデアが浮かばなかったんだなぁ…」と思ってしまう。

スーパージャイアン
ありがちなオチ(←タッチてぶくろの使い回し?)なんだけど、絵とテンポの良さに思わず笑わされてしまった。

わりこみビデオでテレビ出演
主役サイドがサイボーグ009なのは言わずもがな──石森章太郎の許可は取ったのか?(笑)──として、悪役の元ネタは何だろう? 陳腐な悪魔っぽいデザインなんて、ありふれ過ぎていて特定しにくいな。
番組に夢中になるドラの姿は、初期の雰囲気を思い出させる。表情と音声のサンプルを録るあたりは初音ミクっぽいけど、ミクよりも圧倒的に短い収録時間で済むあたり、さすが未来の道具と言ったところか…と言いつつ、機能的には断然、主役はめこみ機のほうが優れているわけだが、話の筋としてはこっちのほうが面白い。

恐竜が出た!?
てんとう虫コミックスでは“デカライト”になっていたが、この意味不明な改悪は何だったんだろう? 宇宙小戦争その他の作品では(話の都合上)存在そのものを忘れられることも多いし、つくづくビッグライトは不遇と言わざるを得ない。

大あばれ、手作り巨大ロボ
鉄人兵団の元ネタと思われる。この巻では他にも、劇場版の元になったと思しきエピソードが幾つか収録されており、やはりこの時期が制作サイドとしても面白さのピークだったのではないかと。
オチの「学校を壊しておけばよかった」をギャグと笑い飛ばせないのだから、イヤな時代になったものだ。

精霊よびだしうでわ
いくら藤子キャラに絵的な可愛らしさなんて求めてないとはいえ、さすがに雪の精の顔はひど過ぎ…珍しく、てんとう虫コミックス版でのリテイクが良かったと思えるケースだな。

ポカリ=100円
殴られ度合いによって金額を決めるシーンやら、殴られる順番待ちで行列つくってるシーンやら、笑いどころの多い傑作。

災難予報機
カタカナ限定とは、未来の道具にしてはインターフェースの性能が低いぞ(笑)。マクロスに関する記事で、電話がコードレスになることを予見できなかったことを挙げて「未来テクノロジーの描写は難しい」と語られていたけど、この道具も同様だな。あとわりこみビデオイージー特撮カメラの記録媒体に“巻き戻し”の概念があったりとか(←21世紀の現在ですら、忘れられつつある概念なのに)。

竜宮城の八日間
読み直したかった話のひとつ。初めて読んだ当時も独特の読後感を感じたものだが、歴史というものを(多少なりと)学んだ今読むと、さらに味わい深いものがある。
かなり限定的だが、海底鬼岩城の元ネタのひとつと考えていいんだろうか? あちらは冷戦構造という当時の時代背景を取り込んだことで、今じゃ逆に“過去の作品”となってしまった感があるのに対し、こちらは特定の時代や国家ではなく普遍的な歴史・文明について語ることで、風化することを避けられたという印象。

温泉ロープでいい湯だな
だから、窓からモノを投げ捨てるなっ!

羽アリのゆくえ
こういう、のび太の成長に関わる話は卒業回(=「小学六年生」3月号の収録回)に充てればいいのに…卒業どころか年度末の掲載ですら無いとはもったいない。

大富豪のび太
デフレ時代の今となっては、全く別の印象をもたらす話。もしもボックスが「ぼくの持ってる一万円はそのままで」なんて融通のきく使い方をできるのは予想外だった。

恐竜さん、日本へどうぞ
のび太の恐竜その他でさんざんネタにしておいて、今さら「白亜紀の日本列島が海の底だったことを忘れてた」というのは、さすがに苦しすぎるだろ。かと言って「どっちにしろ死なないと化石にならないんだから、自然死でも溺死でも結果は同じだし、別にいいじゃん」とか開き直られたら、読んでる子供はドン引きだろうな(笑)。

恋するドラえもん
何となく目元のあたりにチャミーの面影があるような…こういうタイプがドラの好みなのか、あるいは作者がワンパターンなのか。彼女の真の幸せのために敢えて身を引くとは、漢だねぇ、浪花節だねぇ…でも地球破壊爆弾は危ないから、さっさと捨てろよな(笑)。

プラモが大脱走
いよいよドラえもん──だけじゃなく藤子不二雄ブランド、あるいはコロコロコミック全般──が子供文化の頂点に君臨した時代が、終わりを告げる。ガンプラブームを皮切りに、ファミコンが子どもの遊びのスタイルを一新し、最後に(マンガという同族である)少年ジャンプの黄金時代が到来するんだよね。そしてドラえもんは、背伸びしたい盛りの子供にとって“古いもの、幼稚なもの”として脇に追いやられていく運命…。
それにしても、この“バンダム”のデザインがアレすぎて泣けてくる…超銀河伝説バイソンという単語が脳裏をよぎったよ(笑)。決めポーズなんかは本家ガンダムの美味しいところを正確に捉えているわけで、差し障りの無いよう敢えてデザインを崩したとも考えられるけど。

長い長いお正月
今や元旦ですら、正月気分を味わうのが困難になりつつあるよね…。歳をとると時間の流れを早く感じるようになるけど、作者もそういう感覚に陥って、それがアイデアの元になったんだろうか?

思い出せ!あの日の感動
これも作者の実体験がアイデア元ではないかと妄想…ほんとに歳を取ると、何もかも「前に見た(やった)ものと同じ」と思ってしまって、新鮮に楽しめないのが困る。マンガ・アニメ・ゲームその他すべてに渡って、新作に触れても“どこかで見たようなパターン”という印象がチラついてしまったり、「面白いかどうか分からない作品で時間をムダにするリスクを冒すよりも、面白いと分かっている過去の作品に触れる方が確実」という硬直した行動パターンから抜け出せなかったり。
「きみの道具にも飽きた。マンネリなんだよ、はっきり言って」という自虐ネタも、ドラ人気が下降し始めた時期に描かれた作品だということを踏まえると、作者の苦悩する姿が浮かび上がってくるようだ。

のび太航空
…と、なんだか落ち込んだムードの中にあって、そんな流れを打ち破る傑作回が来た。ハイジャック→香港への逃亡と「こづかい100円よこせ」の落差に爆笑→「当局に連絡する」→ジャイアンのかあちゃん登場して叱責→「機長!!なにをするんだ!!」と笑いのコンボが小気味よく決まる。特に最後の航空機事故パロディは不謹慎すれすれのレベルで、仮に今同じことがあったとしてもネタとしての使用は自粛されるだろうなぁ。

ユーレイ暮らしはやめられない
原作は平均的なエピソードという評価だったが、アニメ版の演出──ジャイアンの部屋での、やりたい放題の暴れっぷり──が素晴らしくて、文字通り“化けた”な。「うらめしやあ!」の声(←もちろん大山ボイス)は、今でも耳に残っているほどだ。

のび太もたまには考える
これもアニメ版のスタッフ&キャストがいい仕事したエピソードのひとつ。原作ではドラが淡々とした(なりゆきを見守る保護者的な)姿勢だったのに対し、アニメ版では「能力カセットさえあれば、自分は必要ないのかも」と寂しげに語って部屋を出て行くシーンなど、ドラを“友人”というポジションで描いているのが印象的。クライマックスの“考える人”になったのび太の独り語りも、小原乃梨子の熱演が光る。大人に成長していくことへの期待と、別れの予感を両立てに描いた、まさに卒業回にふさわしい傑作。
 
巻末解説
また“ドラえもんの思い出を絡めつつ、自身の半生を振り返る”パターンか…こういう形式のほうが書きやすいのかも知れないが、読むほうとしては面白味に欠けるんだよな。結婚式のビデオとか夫婦の思い出の写真みたいに、あまりにも個人的すぎて当人にしか価値が無いモノを見せられている感じ?
こんな、無名のファンの独り語りと大差ないような話じゃなく、もっと当人の仕事とか専門スキルと関連づけられた、その人にしか出来ないような独特の切り口による作品解説を読みたいんだよ。

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