日曜日, 7月 18

ドルアーガの塔 FLOOR.9


【FLOOR.9】
モンスター①スケルトン3匹(技量ポイント:8、体力ポイント:4)
②サラマンダー2匹(技量ポイント:9、体力ポイント:4)※
③ゴブリン(サイコロを振るまでもない)
トラップ右側の隠し戸
(腕を挟まれたところをゴブリンに殴られ、5階の牢獄へ)
宝物①シルバーガントレット(防具ポイント:2)
②ミツユビオニトカゲ(死んでも一度だけ蘇生できる)
③青サンゴのブレスレット(ドルアーガの魅了の術を弱める)
出現方法①ゴブリンを起こし、左側の隠し戸を開く
②サラマンダーと話す
③スケルトンを倒す

※リメイク版では、技量ポイント:11

この階は酒蔵らしく、あちこちで酒瓶や酒樽が見つかる。これらが帝国時代から残っている物なのか、ドルアーガに再建された後でモンスターたちが持ち込んだ物なのかは不明。
これまでの階では、登場する敵は生物としての描写に乏しく(←死体と幽霊、あとは下等生物ばかりだったから仕方ない面はあるが)、極論すれば単なるトラップと大差なかったと言えよう。しかし、この階を契機にモンスターたちの生態や施設に関する描写が次第に増え始め、やがて独特の世界観を創り上げていくことになる。
スケルトンの部屋とサラマンダーの部屋をつなぐ廊下の東の端には窓が開いており、まだ夜が明けていないこと、雨がやんでいることを確認できる。ここの記述によると、塔の周囲にある森の名前は「ニプルへイム」らしい…まぁトロールが登場するんだから、北欧神話ネタの地名があってもおかしくは無いか。

8階から始まった複数モンスターとの戦闘は、さらに激化…というか通常戦闘に限定すれば、この階こそが難易度のピークだったりする。
この先の展開を見てみると、10階のコボルトはもともと弱いうえ、状況的にほぼ一方的な虐殺になるし、13階のブルースライムは、この階の敵よりも楽に相手できるはず…というわけで、手堅いプレイに徹するのであれば、この階では戦いを避けて早々にクリアしてしまうのが賢明。

まずスタート地点から北に行った部屋のスケルトン3匹が、この階における最大の脅威である。ポーションの使用をケチって、中途半端に体力の落ちている状態で遭遇したりすれば、あっさり殺されてしまうことも…。
戦力差だけ見れば-3(シルバーガントレット入手後なら-4)であり、余裕で勝てそうにも見えるのだが、やはり「戦いは数だよ兄貴」というのが真理であって、手数の多さにモノを言わせて攻められると、確実にダメージが累積していくのである…52階のブルーナイト戦のように圧倒的なまでの戦力差があるならともかく、現時点ぐらいの差では、サイコロの目の振れ幅の大きさを、完全に吸収し切れないんだよね。
戦力差をプラスマイナスゼロとして、お互いの攻撃が確実にヒットする(つまり相討ち)と仮定してみると、全滅させるまでにこちらが被るダメージの合計は6+4+4+2+2=18ポイント(!)にも及ぶ。実際はもう少し戦力差があるだろうから、そこまでひどい事態にはならないはずだが、それでもかなり手痛い打撃となることは間違いあるまい。
通常戦闘においてこれほどの被害が想定される敵は、全巻を通じても数少ないだろう。人数だけなら38階の影の兵士や48階のミラーナイトが上回るものの、個々の戦力が弱すぎて簡単に蹴散らせてしまうし、49階のハイパーナイト4体も、(選択肢さえ誤らなければ)通常戦闘の始まる前に2体まで減らせるわけで…多くのRPGで見られる「魔法やアイテムの選択肢が少ないぶん、序盤のほうが難易度が高い」というパターンだな。
なおリメイク版では、少しでも楽にアルカニウム鉱石を購入するために、ここでちょっと無理をしてスケルトンと戦っておくという手もある(←詳細は18階にて)のだが、この場合でもいきなり突入するのは愚策。宝を手に入れてパワーアップした後のほうが有利に戦えるし、スタート地点の西にある小部屋(←食事スポットとなっており、記述を読んだ後は自由にポーションを飲めるようになる)では体力を回復できるので、これらの下準備を整えたうえで挑みかかるべきだろう。

そんなわけで、生き残りたければ(嘘つき老人の忠告に逆らって)最初は西に進むことになる。食事スポットの小部屋をさらに進むとサラマンダーの部屋に出るが、ここでも戦いは避け、ミツユビオニトカゲをご相伴に預かってから立ち去るのが無難。そして2ブロック四方の小部屋が連なる西側エリアを進み、壁抜けパウダーを使って南の封鎖区画に入ったら、飲んだくれゴブリンをたたき起こすことで、隠し戸を見つけてガントレットを入手できる。
文章を読んだだけでも、南西の部屋から更に南へすすめる余地があることは、何となく推測できるだろう…マッピングを適当に行なっていたりすると、東の壁にもパウダーを無駄づかいしまうかも知れないが。

気になるのは、9階のゴブリン(←以下、クリリンと表記)と5階のゴブリン(←同じくゴエモンと表記)の関係。まずゴエモンが、ここで飲んだくれた罰として5階の牢獄送りになり、代わりにクリリンが配属されたのか? あるいは元々2匹でコンビを組んで番人を務めていたのに、ゴエモンだけが5階送りにされたのか?
この階のサラマンダーや、ギルが脱獄しようとしたときに襲ってくるゴブリンも2匹ペアだし、ゴブリン1匹だけに任せるというのは戦力的にも不安だろうから、後者の可能性のほうが高そうだな。もしそうなら、どういう経緯で運命を分けることになったのだろう?
たまたま上司が見回りに来たとき、タイミング良くクリリンだけが素面だったのか? それとも、じつは両者は普段から犬猿の仲で(←指輪物語のシャグラトとゴルバグみたいに、小鬼族ってすぐに諍いを始めるイメージがある)、ゴエモンを陥れようと一計を案じたクリリンが、ゴエモンが酔いつぶれたのを見計らって上司に密告し、まんまと牢獄送りにすることに成功したとか。
となるとゴエモンはその事を恨みに思っていたからこそ、宝の隠し場所をあっさりギルに教えたのかも…あわよくばギルが宝を持ち去り、クリリンがその責めを負わされることで復讐できると考えたんだな。ところが実際には想定した以上の結果となって、クリリンサイコロを振るまでもなく殺されてしまうわけだが。
ところで、飲んだくれたゴエモンを更迭した時、ここの管理責任者は、クリリンが同じ轍を踏まないよう手を打つべきだったはずなのに、なぜ酒瓶を片付けてしまわなかったのだろう?
「死体を探ってみたが、汚れた衣服以外何もない」という記述からすると、ゴブリンは自前のパウダーを持たされていなかった…つまり実質的に、この封鎖区画の中に閉じこめられている状態だったと思われる(←まぁゴブリンなんて、こうでもしないと勝手にサボって、どこかへ行ってしまったり逃亡しそうだし)。上司としては「ずっと閉じ込められっぱなしではストレスも溜まるだろうから、酒ぐらいは大目に見てやろう」という事だったのかも知れないな。ところが当の本人は「封鎖区画だから、上司も滅多に見回りに来ないだろう」と気を緩めて、正体なくすほど飲んだくれてしまったと(笑)。
 
先にクリリンを始末してしまうと、隠し戸を発見できないので注意が必要。
またスケルトンと戦わない場合は、最善のタイミング(←具体的に言うと、16階のゾロア戦の直前)でレベルアップを図るために、敢えてクリリンを殺さずスルーするという手もある。
つまり…9階に来た時点で経験値は11ポイントであり、ここでクリリンを殺すと12、さらにスケルトン3匹で15となる。仮にサラマンダーを倒す場合でも、2匹ずつなので経験値は奇数のまま。そして10階でコボルト3匹を始末すれば、奇数プラス3なので偶数となる。
あとは13階のスライム(←いずれも2匹ずつ)と戦い続ければ、上限である26ポイントまで稼ぐことができる。そこから15階のクオックス2匹と、16階のトロールおよびホブゴブリンを倒すことで経験値が30に到達し、レベルアップとなるわけだ。
もしもスケルトン戦を避けるなら、3を引くことになるので、上記の計算における奇数と偶数が反転する。すると13階を終えた時点での上限は25となってしまい、1ポイント分の遅れが生じるから、ゾロア戦の直前における経験値は29…すなわちレベルアップが間に合わない。これを回避するため、クリリンを殺さずに見逃すことで、経験値をさらに1ポイントマイナスして調整するわけね。
まぁ、そこまでゾロア戦を警戒する必要があるか?という気もするし、ここまで来ると各プレイヤーの気分の問題とか、その時々における戦力ポイント体力ポイントを踏まえた上でのアドリブ的な判断になるだろう。

最後はサラマンダーについて。なぜかリメイク版では大幅にパワーアップしており、まともに相手できないほど──体力はともかく、技量ポイント11といえばクオックス(15階)~ホワイトナイト(19階)クラスだぞ──なのだが、この処置については疑問の残るところ。
たとえば旧版におけるドラゴン族の能力値を列記してみると
モンスター技量体力
ダブルヘッド54
サラマンダー94
クオックス10~1110
シルバードラゴン1212
ブラックドラゴン1816

と、おおむね右肩上がりに設定されているのに対し、リメイク版はサラマンダーがクオックスと同等以上の技量ポイントなので、どうにも収まりが悪く感じられる。
また本作においては、どちらかといえばサラマンダーはドラゴン族というより、ヒューマノイド系モンスターの一員であるかのような描写がなされている。 そこで今度は、オリジナルの(=原作ドルアーガに登場しない)ヒューマノイド系モンスターを能力値とともに列記してみると

モンスター技量体力
コボルト74
ゴブリン84
サラマンダー(旧版)94
トロール108
サラマンダー(リメイク版)114
ホブゴブリン118
オーク1210

と、かなりキレイな数値が並んでいるように見える。
ナイトやスライムなど、他の種属のモンスターは(原作との兼ね合いからも)バリエーションが有限であり、必然的に数値が飛び飛びになってしまう…おそらくは配置が決定した時点で、プレイヤーキャラの能力値や難易度に応じて適宜、妥当な数値が割り当てられたのだろう。
これに対してヒューマノイド系は、原作の縛りも少なく元ネタも豊富であることから、逆の方法(←まず登場させる種類と強さの順番を最初に決め、そこへ順序よく数値を割り当てて“強さランク表”を作成。あとはプレイヤーキャラの能力値や難易度に応じて、妥当な強さのモンスターを配置する)が用いられたのかも知れない。
いずれにせよ、バランスの良い難易度となるよう心がけて設定・配置されていた旧版と異なり、リメイク版では(旧版をクリアしたプレイヤーへの再挑戦的な意味合いもあって)このように敢えて難易度バランスを壊しかねない変更が行われたと考えるべきだろうか?
なお「経験値が16以上なら逃げることもできる」という記述は、裏を返せば“経験値が16以上でも戦闘を選択できる”という意味に受け取れる。つまり理論上は、ここで無限アップが可能なわけね…ほとんど意味ないけど。

ちなみに、もともとボードゲーム版のサラマンダーは“直立歩行するトカゲ”といった外観だった。その前足は“腕”というには細く短すぎて、リザードマンのように剣を握るのは難しそうだが、代わりの武器として炎が描かれている…といっても典型的な”火トカゲ”のイメージのように、全身が炎のウロコに覆われているわけではなくて、口元から一筋の炎を吐いているんだけど、これがドラゴン族に共通する(←格下のダブルヘッドスネークは別だが)シグニチャーになっているわけね。
けれども本作のサラマンダーには、炎に関する描写は皆無だし、するとやはりドラゴンではなくヒューマノイドに分類すべきだろうか…ここまでアレンジを重ねると、もはや原型をとどめてないな。経緯を知らず一足飛びにゲームブック版を見た人は「どこが火トカゲなんだよ!?」と思ってしまいそうだ。
もうひとつボードゲーム版サラマンダーの特徴といえるのが、単眼であること…つーか、ボード版オリジナルのモンスターって、ゴブリンやらオーグルやら単眼だらけだし(←デザイナーの趣味?)。本作でも「額が横に割れて、そこに目玉が出現した」と描写されているので、この点についてはボード版の設定を受け継いでいるらしい。
ヒューマノイド型に改変された理由の一つは、ミツユビオニトカゲを食わせてもらったり宝の情報を訊いたりというコミュニケーションを成立させるためだろうな…ボード版の外見だと、会話が成立しそうに見えないし。その一方でボード版のイメージも残そうとした結果が“戦闘時には、人間形態から怪物形態に変身する”という追加設定なんだろうけど、これってヒューマノイドというより、むしろ獣人族ライカンスロープの特徴に近いような気がするぞ…まぁ厳密には、獣人族が変身するのは哺乳類に限定されるはずなんだが(←WERE AMOEBA? そんなのは知らん!)。

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