金曜日, 7月 2

去年はいい年になるだろう

メガミマガジン娘TYPE立ち読みの代償として、V書店で購入。価格がドラえもん第8巻と全く同じ1785円だったが、今度は同じあやまちを繰り返さなかったぜ(←当たり前だ)。
かなり読みごたえのありそうな分量なので、当分はゲームブック関連の書き込みが停滞しそう…まだSFマガジン先月号も読み終わってないし。

7/09追記
休暇を利用したとはいえ、ほぼ丸2日であっさり読み終わってしまって、やや拍子抜け。
もともと読みやすい文章を心がけている(←本作の中でも言及されていたな)上に、今回は現代日本が舞台(=多くのことが説明不要)で、しかも山本弘が主人公(←ある種の人間にとっては常識に近いような、特定のジャンルとの関連多し)の私小説ということで、非常にリーダビリティが高かったというのが理由のひとつ。
その反面、“人類社会の命運”というマクロな問題よりも“山本弘個人”というミクロの問題により多くのページが割かれたことでスケール感に欠け、(「詩羽」ほどではないけど)SF要素が薄くそっち方面での魅力に乏しいなど、リリーダビリティという点では他の作品に劣る気がする…まぁ本作の中で触れられていた影響から、「神は沈黙せず」や「アイの物語」を読み直したくなったという面も否定できないけど。
山本家の離婚・財政問題が最大のテーマみたいな扱いのままで終盤に突入してしまう構成はどうかと…エクスキューショナーが出現したときは、正直ホッとした(笑)。

初めてカイラと向かい合うシーンで「メトロン星人と対話するモロボシ・ダンの心境」と言うような内輪受けのネタは面白かったが、もうちょっとサービスして欲しかった気もするな…ガーディアンの数が500万体と聞いて「バルタン星人より遙かに少ない」と返すとか、未来の自分から受け取った作品を見て「あやうしライオン仮面」の気分を味わうとか。
ネタ成分が控え目なのは、非オタク系の読者にも配慮した結果なんだろうけど、この作品をいちばん楽しめるのが作者と同族のオタクであることは明らかなわけで、もう少しコアユーザーを優遇してくれてもバチは当たるまい(笑)。

未来の情報に(悪意あるいは伝言ゲーム曲解による)間違いが混じって判別がつかないというアイデアは面白いな。「岡田斗司夫が50キロのダイエットに成功」、「そのまんま東が宮崎県知事に」、「北野武がゴジラ映画を撮る(←マジで見たいんですけど!)」、「仮面ライダーが電車を運転」…こうやって列記してみると、どれも確かにウソくさい(笑)。
ケータイ小説の流行を信じたくない気持ちは分かるなぁ。しかし、こういうブームも様々な要素が重なり合って生まれるわけだから、本来の歴史と異なるタイミングで発表してしまうと、同じ結果を迎えるかどうかは疑問。
そして作者自身も、「未来の自分が書いた作品を、自分の作品として発表するか否か?」というSF的パラドックスに悩まされることに…これは近ごろ後を絶たないパクリ問題に対する作者の意見表明でもあるのだろうが、最初は「パクリで賞をもらっても意味ないだろ」と正論を吐いていたのに、変化した歴史の流れに翻弄されて経済的に苦しくなると、そんなキレイ事を言っていられなくなり…このあたりのリアルさとかバランス感覚を心がける姿勢に関しては、素直に評価。パラレルワールドの山本弘が「トンデモさん」と化してしまうようなネタもやってるし。

このように作中における自分自身の扱いはなるべく公正を心がける一方、同じく作中に登場する実在の人物たちの記述は慎重に徹しているようで、(基本的に)故人は登場せず、行儀の悪い振る舞いをさせたり批判することも控えている印象。
その反動ゆえか、不幸やトラブルの根源などの要素を、全部まとめて山本ファミリーに押しつけたような形になってしまっているのが何とも…山本夫人は夫の作品のうち、SFにはあまり目を通さないことが作中でも言及されているけど、それに甘んじて好き放題やってしまってるような。
まぁ「婦人を愛している」というのは紛れもなく本心なのだろうが、その一方で「美少女アンドロイドと昵懇になりたい」というのも、また作者の嘘偽らざる気持ちなのだろう(笑)。
その後ろめたい思いに対する贖罪が、ラストの“時空を超えた愛”の描写なんだろうね。しかし本作のメインテーマが「未来からの(上から目線による)価値観の押しつけを否定すること」であるはずなのに、山本夫婦の出会いと恋愛感情の醸成にかぎっては例外扱い…というのでは説得力に欠ける気がするぞ。
人を愛する気持ちなんて、それこそ無数の不確定要素(←「その日の気分」みたいな些細な事にさえ左右されるような)で変化するものであって、いきなり「お前は将来この人と結婚するから」なんて言われて納得するのは、1回目のお見合いで即座に結婚を決意するよりもあり得ないだろうし。

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