金曜日, 2月 10

風の邦、星の渚 下―レーズスフェント興亡記

ニュータイプアニメディア立ち読みの代償として、V書店にて購入。
そもそも(さほど気乗りがしなかったにも拘わらず)アニメ雑誌の立ち読みを急いだのは、例によって少数しか入荷しないと予想されたナポレオン~覇道進撃~第2巻を、売り切れてしまう前に速攻で確保するのが目的だったのに、発売日である今日の夕方には、すでに在庫ナシだったという…そんなわけで仕方なく、けっこう前巻が面白かったコレを、代わりに購入することに。

「ファーストコンタクトSF」と銘打っている割に、上巻はSF色は控えめで、レーズを(本当に)泉の精あたりに置き換えれば、もう完全に正統派のファンタジーになってしまう感じだったが、それで何ら問題が生じることも無く、このままファンタジー路線に徹して終わらせたほうが無難…とさえ思えたほど。
一方、これまでに敷かれたレーズの設定に関する伏線から憶測すると、下巻ではSF色が濃厚になって、せっかく築きあげたファンタジー系の世界観が台無しになってしまわないか心配だったりする…まぁ、そこは作者の力量に期待するしかあるまい。

さて読み終わったが…SFにならなかった(笑)。あとがきによれば、そもそも歴史モノという依頼を受けて書き始めたんだけど、「大量の資料集を読み込んだところで、本職を納得させられるような作品を書くのは無理」と悟って、自分らしい要素を加えた結果、こういうものになったそうな…まぁ面白かったから別にいいんだけどさ。
しかし、背表紙やオビのあらすじ紹介で“ファーストコンタクトSF”と表記したのは明らかに偽りありで、訴えられても仕方ないレベル(←それを回避するために、“異色の”という枕詞を付け加えたのだろうか?)。
確かに“異質な知性体との接触”ではあるものの、どちらかといえば異質なのは(無知で迷信深い中世ヨーロッパの)地球人たちの側であり、むしろ科学知識と合理的思考を合わせ持ったレーズのほうが、読者の価値観に近しいという逆転現象が生じている…これが作者の意図なのかどうかは不明だけど。

とはいえ地球人キャラ全員を頑迷固陋にしてしまうと話が進まない&読者にストレスが溜まるわけで、さすがに主要キャラについては、けっこう話の分かる性格に設定されており(←それゆえに、あの世界の一般人からは白眼視されがちなワケだが)、また相応に分量のある作品という事もあって、読み終わる頃にはキャラに愛着を持てるようになっていた。
これに関しては、解説にあるように、作者はラノベ出身だから、キャラを魅力的に描くことに通じている…という面もあるだろうな。その一方で、悪い意味でラノベっぽくなる(←たとえばレーズが、都合がいいだけの安易なツンデレキャラになるとか)のは避けるよう、かなり慎重な調整を行なったのでは無いかと憶測。
しかし、そういった点を含めても、ルドガーを主人公──作品世界内の視点で言うなら“街のあるじ”──として引き立たせるために、リュシアンは思いっきり割を食わされてるよなぁ…最初の頃はエルメントルーデに懸想したり、教会の価値観に縛られていたりと、いけ好かない印象だったけど、それすらもルドガーを持ち上げる意図に基づいたものだし、なにより死後の扱いがヒドすぎ。
そして、その差別的扱いが次の世代まで引き継がれているとか、もう踏んだり蹴ったり。アイエはクリューに、いずれ彼がレーズと会うことになると告げたにも拘わらず、実際にエピローグでレーズが姿を見せるのは、リュシアンの息子であるクリューではなく、ルドガーの養子ダリウスを救うためだという…。せめて、この次世代コンビについては互角の条件で競わせてやりたいものだ…シャマイエトー(2代目)を巡って三角関係になるとか(笑)。

アニメ化は…難しいだろうなぁ。近ごろはライトファンタジーですら当たらないというのが定説だし。こんな本格派…というには微妙だが、内容が地味なのは間違いないわけで。キャラ萌えで釣るには、レーズもエルメントルーデも少しばかり難があるしなぁ…ルムが処女厨から叩かれるのは、まず確実か。
いっそハガレン青エクの流れで、兄弟モノとして腐女子受けを狙う方向で攻めてみるとか? すると日5枠で、ハインシウス役は藤原啓治というのがお約束…って、ちょっとイメージ違うな。本文を読んでいるときは、土師孝也の声で脳内変換されていたし。ちなみにルドガーは緑川光だったけど、これもイマドキの腐女子を釣るには、いささか古いな(苦笑)。

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