金曜日, 8月 6

ドルアーガの塔 FLOOR.11

【FLOOR.11】
モンスターウィルオーウィスプ(すべての体力ポイントを失う)
トラップ振動音(合計回数が120回を超えると、ウィルオーウィスプが大量発生)
宝物①プレートメール(防具ポイント:2)
②レッドポーション(体力ポイントを原体力ポイントまで回復)
出現方法①中央の小部屋に入る
②南から2ブロック目の通路を、中央から西へ進む

ウィルオーウィスプ面である。原作では、面スタート時からウィスプが出現するのは21階以降なので、それに比べるとかなりの前倒しだな。
やはりここは「イシター」の早回しBGMを聞きながらプレイすべきだろうか。原作「ドルアーガ」はBGM早回しも無かったし(←容量の関係か?)、「ナイトメア」のように専用BGMも用意されてないけれど、よく考えてみれば、そうやって脅威を煽る必要があるほどの敵でも無いんだよな…マトックリングを使えば、簡単に無力化されてしまうわけだし。

そういう「当たらなければ、どうという事はない」的なイメージを再現しようとしたのか、本作におけるウィスプも、こちらから近づこうとしなければ、接触してアウトになることは無い…単純きわまりない設定と言えよう。
後年の「パンタクル2」では、時間経過とともに場所を移動する“水晶球”なんてのが登場したけど、さすがにこの当時は、あそこまで画期的なシステムは発明されていなかった…まぁパラグラフ数も足りないだろうからね。
そんな中で、原作の“ウィスプはギルを追い回すのではなく、特定の法則に従って動き回っているだけ”というルールの雰囲気を、限定的とはいえ何とか再現しようとしたのが、南西エリアにいる青ウィスプ。こいつは、東の方から接近すれば北に遠ざかって行くので、無事にレッドポーションを拾うことができる…という仕掛けになっているのだ。

なお、北東エリアにいるのは赤ウィスプであり、またタイムオーバー(後述)時には赤青ともに大量発生するものの、実際にギルと接触する際の処理は、やはり赤ウィスプのパラグラフが使われる。さらに43階で登場するのも赤ウィスプで…と、本作では「赤ウィスプ=勤勉青ウィスプ=役立たず」という印象があるな。
他シリーズでは逆に、総じて青ウィスプのほうが手強いというイメージ(←原作では、リングの通用しない42階&47階で出現する青ウィスプが最も厄介だし、「イシター」でも赤より青ウィスプの方が、呪文への耐性が強い)なわけで、これもファンの知識を逆手に取った、一種の引っかけなのかも。

もうひとつのウィスプの重要な特徴、すなわちタイムオーバーによって増殖するという性質については、時間経過をカウントアップ方式で累積していき、制限時間内にクリアできなければアウト…というシンプルな方法が採用されている。
基本的には「時間経過=移動距離」であることから、その計測を容易に行えるというメリットも踏まえて、この階のマップデザインは同心円状(もしくは入れ子構造)となっており、その東西南北の中心軸に沿ってドアが設置されている。この形状なら、どちらの方向にも等距離で移動できるため、時間経過の処理を手軽に済ませられるわけだ(←ドアを通って移動する場合だけは例外だけど、これは仕方ない)。

ところで、この階のスタート地点である最外周から見ると、カギが置かれている中心の小部屋は、内奥に位置することになる。老騎士の遺言にあった「奥のドアから見ること」とは、ドアを通って中心(奥)の方をめざせ…という意味なのかも。
中央付近の通路は、かなりパラグラフ移動が面倒くさく感じられるので、ここは思い切って壁抜けパウダーを使い、ショートカットを行うのも一手である。最初に手に入る6袋のうち、使う場所が決まっているのは3袋分だけなので、残り3袋は自由に使えるわけだが、そのうち2袋をこの階で、中央の小部屋とその南の通路との往復に使ってしまおうというわけだ。これで片道3パラグラフ、往復なら6パラグラフの移動を省略できる。
最後の1袋については、13階から10階へZAPした後、もう一度この階のカギを取りに行くときに同じルートで使ってもいいし、19階で使う選択肢もある(←詳細は19階で)。

ここで気になるのは、ZAPしてから再びここに来た際、もう一度カギを取りに行く必要があるのか?ということ。それぞれの根拠を併記してみると…
原作では、ミスもしくはコンティニューして同じ階をやり直す場合、そのたびにカギを拾い直す。
原作はカギの所有に関するデータ管理スペースが1つ分しか無いので、所有判定を行なえるのは、今いる階のカギについてのみ(=次の階に移ると、前の階の情報はリセットしなければならない)。これに対しゲームブック版では、そのような制限が無いのだから、拾ったカギは全て所有しているものとして対処可能。
本文中で「カギを抜いた」とか「持っていこう」などの記述が見られない以上、ドアに差しっ放しにして来たと考えるのが普通ではないか?
しかし「アドベンチャーシートから、カギの番号を消しておくこと」というような指示も無いのだから、そのまま持っていて再利用できるという解釈も成り立つ。
いや、再利用できるタイプのカギ(←銀鎖のカギや、第3巻に登場する鉄のカギなど)については例外的に、所持アイテムとして記載するようになっているわけだし、それ以外の普通のカギは、使い捨て方式と考えるべきでは?
だが現実の問題として捉えるなら、“何度も使うカギ”と“一度しか使わないカギ”の区別がつかない以上、せっかく拾った物をムザムザ捨てていくことは無いだろう。あとで使う機会があるかも知れないし、所持し続けることが億劫になるような大きさや重さでもない。
階段を上ると、大岩のシャッターが降りて戻れないようになるわけだが、ZAPして再び同じ階段にやって来ると、またシャッターが上がっている…このように階段の状態が初期化されるのなら、それと対になっているカギの状態も、同様に初期化されるはず。
仮にシャッターの仕掛けは機械的なもの(←29階のトラップドアと同じ)として説明できるとしても、カギが元通りの状態に戻るというのは、何らかの魔法的な作用が働かなければ有り得ないだろう。

では、その「何らかの魔法的な作用」とは何か? そもそもこの塔は、アヌ神によって破壊された後、ドルアーガの強大な魔力によって修復されたものである。その魔力は今なお効果を及ぼしていて、塔を絶えず一定の状態に保ち続けているのではないか。ドルアーガが滅んでその魔法の効力が失われたからこそ、「イシター」で再び塔は崩壊してしまったわけだし。
でも本作において塔が崩壊する理由は、ドルアーガが作動させた自爆装置なんだよな。まぁこれは「自分が死んでから、魔法の効果が失われて塔の崩壊が始まるまでに若干のタイムラグがある。その間に、ギルに逃げられてしまうかも知れない」という、ドルアーガの焦りによるものだと解釈しよう…実際、自爆装置を使ったにも拘わらず、まんまと逃げられてしまうし(笑)。
さて話を戻すと、上述の「塔の状態を保ち続けようとする魔法の力」がカギにも影響を及ぼしており、持っていこうとしても、しばらくすると元の場所に戻ってしまう…というのが結論になる。だからZAPするたびに、中央の小部屋へカギを取りに行かなければならないわけだ。

この仮説を補強する材料として挙げておきたいのが、6階のカギが置かれている部屋についての「ホコリが積もっている」という記述。特に深い意味もなく書かれた、雰囲気を出すためだけの描写かも知れないが、実際の状況を考えてみると奇妙だわな。
順を追って確認していくと、まず原作と違って、本作においてはカギおよび階段の位置は不変である…階段の位置が変わってしまうとダンジョンの構成上の問題が生じる(例:2階→3階)し、メスロンが残した2階の地図などから、カギの位置も固定されていることは間違いない。
となると6階のカギも、ホコリの積もった部屋に置かれ続けていたはずなのに、ギル以前にカギを拾ったであろう侵入者たちの足跡が残されていないのはおかしい…ということになる。
先ほどの「塔を元通りにしようとする魔力」説を適用すれば、この謎をうまく説明することができる…つまりカギだけでなく、室内の細かい状況も復元されるので、足跡は消えてホコリが復活するというわけね。

中心にある小部屋では、カギと一緒にプレートメールも見つかる。ほかの防具が、選択肢を誤れば手に入らない可能性もあるのに対し、これだけは確実にゲットできるのだが、これは原作における、宝物の出現方法の難易度に準拠している…というのは考え過ぎだろうか?
アーマーは最下段にドルイドが出現すればいいだけなので、適当にプレイしていても偶然に出現する可能性がある。一方でガントレット(←レッドスライムの呪文を盾で受ける)やレッドラインシールド(←敵を全滅。ただし全滅させる前に、ドアを通過しておくこと)は運の要素なども絡んで、そう簡単には手に入らない。
また、それぞれの出現階に(1階ずつズレがあるとはいえ)相関関係があることも、これらの防具の配置が意図的に行われた証拠のように思える。
原作ゲームブック版
9  シルバーガントレット
10ガントレット 
11 プレートメール
12アーマーヘルメット
13レッドラインシールド 

ところでガントレットヘルメットと異なり、このプレートメールについては、どこにも色彩に関する記述が見当たらない。諸々の断片的な情報を手がかりに、推測を積み重ねてみると…
ガントレットヘルメットは”銀色”と明記されており、色彩を統一すべきではないか。
その場その場で現地調達した品々なのだから、むしろ統一されていない方がリアルだろう。
原作では緑→赤→青と、パワーアップする段階ごとに統一されていた。
それは防具に限らず、リングクリスタルロッドなど他の多くのアイテムにも共通する仕様なので、参考にならない。
マスクマンがギルを見て、ミラーナイトと勘違いした。
プレートメールが見つかる小部屋では、「ブルーナイトブラックナイトの物もある」と明記されているにも拘わらず、ミラーナイトの名は無い。となると、むしろミラーナイトアーマーではないと考えるのが妥当である。
「船」でブラックエルフの村に降りた際、ブラックエルフの一人がギルを見て、金色の鎧を着ていないことから、別人だと勘違いした。金色でないことは間違いない。
いや、27階から(ロープ無しで)26階へ飛び降りたときの「まるでトラのよう」という描写は金色をイメージさせるし、なにより20階でドルアーガに魅了されゲームオーバーになった時のギルの通り名が“ゴールデンナイト”であることから、金色以外はあり得ない。
と、明らかに矛盾する記述が併存している。この件に関しては「選択肢によってパラレルな状況が発生する」という、ゲームブックならではの事情だと納得するしかあるまい。

原作プレイヤーなら誰しも、「リング」と聞けばウィスプを通過できるものと期待することだろう。だが18階でオニキスの指輪を手に入れた後、18もしくは19階でミスして10階にZAPし、指輪を所持した状態でこの階のウィスプと接触しても、何ら効力を発揮しない。
では原作プレイヤーを引っかけるフェイクだったのかと思いきや、43階のウィスプ相手には、しっかり効果を発揮する。ところがこのウィスプは経験値稼ぎの対象なので、それを妨害してしまう指輪はジャマ物でしかないという、なんともアマノジャクなアイテムだったりする。
素直に考えるなら、作者はオニキスの指輪を入手後にZAPされるという事態を想定していなかったのだろう。あるいは、後年の作品のように記号や英数字を利用した間接フラグチェック機能が実装されていない本作では、アイテムの所有判定を行なう際に「あなたはオニキスの指輪を持っているだろうか」みたいな直接的な表記をする以外に方法がないため、この時点でネタバレすることを避けたかったのかも知れない。
あえて理屈づけを試みるなら、オニキスの指輪は11階のウィスプには効果が無いものの、43階のウィスプには有効である…と解釈することになる。仮に11階で遭遇するのが赤ウィスプのみであり、43階にいるのが青ウィスプであったなら、「オニキスの指輪は、原作のグリーンリングに相当する効果(=青ウィスプのみ通過可能)を持つ」と説明することが可能だった──もちろん、赤と青が逆でも構わない(←その場合はレッドリングだということになる)──のだが、あいにく11階にいる赤と青どちらのウィスプにも効果が無かったので、この仮定には無理がある。
そこで思いついたのが「そもそも11階のウィスプと43階のウィスプは、別種の存在である」という大胆な仮説。オニキスの指輪は、43階のウィスプ(←以後、ウィスプ43と呼称する)には有効だけど11階のウィスプ(←同じく、ウィスプ11と呼称)には効果が無かったという解釈ね。
この説の根拠としては、ウィスプ11は接触すると全ての体力ポイントを奪われるのに対し、ウィスプ43は8ポイントのダメージだけで済むことが挙げられる。また本文中において、ウィスプ11は「火の玉」であると記されているが、ウィスプ43は「光の玉」と表記されている点にも注目したいところ。
ウィスプ43に効果を発揮した各種魔法や水の入った筒(聖水)が、ウィスプ11に通用するかどうかも興味のあるところだな。MAGNONAZLEについては、覚えたあとで「船」に置き去りにされて、1階からやり直せば検証できるはずなのだが(笑)。

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