水曜日, 5月 19

ドルアーガの塔 FLOOR.2

【FLOOR.2】
モンスター①ブルーナイト(技量ポイント:6、体力ポイント:4)
②ダブルヘッド(技量ポイント:5、体力ポイント:4)
宝物2階の地図および金貨10枚
出現方法西から2本目の通路を通過

少しは迷路らしいデザインとなった2階。といっても迷う要素は全く無いし、基本的には全ルートを踏破する事になる(はず)なので、マップをもらってもあまり嬉しくないぞメスロン! この階でヒントとなりうる要素は2つ、すなわち2種類のモンスターの強弱と、2つある階段のどちらを昇るべきか…なのだが、どっちに関しても手がかりは示されていないし。

できればもっと複雑な構造の階──たとえば19階とか(もちろんトラップ情報も込みで)──のマップだったら良かったのに。6階から34階まで連行される途中で、12階の脱出方法についてのヒントを残してくれたりするし(←連行役のモンスターが隠し扉を開く様子をチラ見して、こっそりレイベンに伝えたのだろうか?)、不可能ではないはず…。
しかし、第2巻でいちばん複雑だった39階のマップは、謎解きの答えも含む全情報が途中で判明してしまって、クライマックス前なのに盛り上がりに欠けたんだよな…ヒントを与えすぎるのもダメなのかも。
そもそもゲームブックというメディアの構造上、パラグラフ移動の際に途中のページの挿し絵が目に入って、ネタバレを食らってしまう…という事故を完全に回避するのは難しいわけで。

さて、この階には2種類のモンスターが出現するわけだが、ここでプレイヤーの、ゲームブックに対するスタンスが問われることになる。
なるべくリアリティを求める、あるいはフェアプレイを心がけるプレイヤーであれば、ここではダブルヘッドブルーナイトそれぞれと1回ずつ戦うべきだと考えるだろう。
そういうことに拘らず、損失が最少になることを優先しようとするなら、技量ポイントの低いダブルヘッドと2回連続で戦おうとするはず。
まぁ出現するモンスターの数と、経験値の上限との兼ね合いは、冒険が進むごとにだんだん曖昧になっていくので、あまり几帳面に遵守しようとしても無駄なんだけどね。むしろルールの範囲内で、効率よく経験値を稼ぐ組み合わせを考えることに、楽しさを見出すようになったりして(←そのスタンスに徹するのであれば、じつは正解は「どちらとも戦わない」だったりするのだが)。

この、経験値の上限と絡めたモンスター出現の処理は、ゲームブック作家の腕の見せどころとも言える重要な要素のひとつであり、鈴木作品においても様々な試行錯誤が続けられてきた。羅列してみると…
魔界の滅亡
モンスターを倒すと手に入るフラグアイテムの有無をチェックする方式。アイテムの種類が、わざとらしくなってしまいがちなのが難点。
ブラックオニキス
モンスターの出現処理についてはチェックボックス方式を用いる(←いちどダンジョンから脱出すると初期化される)か、あるいは無制限であり、同じモンスターと何度でも戦うことができる。ただしレベルアップ回数は有限なので、それ以上に経験値を稼いでも意味はない。
パンタクル
出現フラグチェックと経験値の両方を兼ねる「経験記号」を用いることで、効率的に処理される。いちど倒したモンスターは再出現しないか、した場合も(基本的に)同じ経験記号しか手に入らないので、戦うだけムダ。

これらよりも古い作品である本作では、まだ“経験値と照らしあわせて出現の有無を判定する”というシンプルな方式が用いられており、戦闘が発生しない場合の描写についても「消えてしまう」とか、戦えず強制的に逃走させられる(←49階のホワイトナイトのように、一度負けた敵が、かなわないと判って逃げ出すならともかく、何故こちらが逃げなきゃならないのかと)とか、けっこう理不尽な内容だったりする…まぁ、いかにもゲームブック的とは言えるか。

それにしても挿絵を描いてもらえなかったダブルヘッドには同情する…クオックスなんて、2匹とも描いてもらってるのに(笑)。まぁモンスターですらなく、単なるトラップ扱いにされたスネークとか、完全に出番のなかったバットよりはマシ…と言いたいところだけど、こいつらは本家である「イシター」のほうに登場して一族を形成してるわけで、むしろ出世したと考えるべきか。
これらのモンスターは、いずれもボードゲーム版ドルアーガの出身なワケだけど、ドラゴン族

1F:スネーク(←普通のヘビ)
   ↓
2F:ダブルヘッド(←首が2本に)
   ↓
3F:サラマンダー(←炎を吐く)
   ↓
4~6F:クオックス、シルバードラゴン、ブラックドラゴン

と、見た目非常に分かりやすくパワーアップして行ってるのに対して、デーモン族のほうは

1F:バット
2F:ゴブリン
3F:スケルトン
4F:オーグル
5F:バンパイア
6F:ドルアーガ

と、なんともカオスな顔ぶれ(笑)。バットだけ浮いてるように見えるけど、これはバンパイアの下っ端(←「イシター」では強弱が逆転してるみたいだが)という解釈だろう。
また鬼系(ゴブリン&オーグル)は、一般的にイメージされるような西洋風ファンタジー世界のそれではなく、むしろ東洋の鬼…つまり地獄に住んで罪人を苛む、文字通りの“鬼”のイメージなんだな(←そう言われてみるとオーグルは赤鬼のようにも見えてくるし、ボードゲーム版のゴブリンが鎌を持っているのは死神のモチーフなのかも…というのは、さすがに考えすぎ?)。
つまりデーモン族とは、ドルアーガも含めて全員が地獄の出身であり、奇数階はアンデッド系、偶数階では鬼(←ドルアーガは悪魔だけど)系を交互に登場させよう…というコンセプトなのね。

ついでなので、用語の再確認をしておこう。上述のように、ドルアーガの出身地は“地獄”である。で、一般的なイメージとして“地獄”と“魔界”は同一視される場合も多いわけだが、本作における“魔界”(あるいは暗黒界と呼ばれることも)とは、ドルアーガを頂点とする闇の住人たちの勢力を指す言葉。
だから発売当時は違和感を覚えた第3巻のタイトル「魔界の滅亡」も、べつに悪魔たちが住む世界(←空間的な意味での)それ自体の崩壊を意味してるわけではなく、言葉として間違ってはいないという事で。

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