日曜日, 9月 9

ローマ人の物語 悪名高き皇帝たち

知名度においては、カエサルは言うに及ばずアウグストゥスにも激しく劣るであろう第2代の皇帝ティベリウスだが(←実際、高校レベルの世界史には登場かったはずだし、“暴君”ネロのように分かりやすいイメージが定着しているワケでもない)、可能な限り神格化を避けようとしたり、就任に際して巨大すぎる権限の分担を求めたりする姿勢は、諸行無常や謙譲を美徳とする精神の持ち主である日本人には、意外と通じるものがあるかも知れない…と思ったり。
まぁ実際には、純粋に(アウグストゥスとは少し違う方面での)リアリストであったがゆえの言行らしいけど。
そして、序文の
>皇帝の悪口を言うだけで済んでいた時代
とか、増税なき財政再建を成し遂げるのに苦労させられた点とか、妙に現代日本と符合する要素が見受けられたり…まだ衰退期じゃなく、高度成長期から安定期へのソフトランディングを模索している時期のはずなんだが(苦笑)。

しかし、せっかく苦労して黒字に転換させた財政も、その後を継いだカリギュラのせいで、あっさり吹っ飛ばされてしまうのだから救われない。
これまで読んで来たおかげで、ほんの少しはローマ(人)っぽい名前や発音がどういうものか分かってきた気がするけど、“カリギュラ”というのは違和感あるな…と思ったら、本名じゃなくて愛称だったのね。個人的に“カリギュラ”と聞いて思い浮かぶのは、昔の藤子マンガ「シルバークロス」に登場した、悪の総統の名前なのだが(笑)。

財政を破綻させた末にアッサリ殺されてしまったカリギュラの次が、歴史家皇帝クラウディウス。いちおう皇帝の血縁とはいえ、帝位に就くなんて自他ともに全く考えていなかったことから、政治にも軍事(←これは肉体的なハンディキャップが原因だけど)にも関わらず、歴史研究家として半生を過ごして来たのが、いきなり運命のいたずらで第4代皇帝として押し立てられる羽目に…と、この“本意では無かったにも拘わらず、歴史研究家としてのスキルを活かして、押し付けられた職務を意外に巧くこなした”という点だけ見れば、銀英伝のヤン・ウェンリーと似てなくも無い?
まぁ一般庶民からの評価が低かったり、シェーンコップの言う“歴史の本道”を歩むことに躊躇を見せなかったり、女性運に全く恵まれなかったり(←最期は、嫁さんに毒キノコ料理を食わされて死んだそうな)…と、ほかの面では類似点が少ない以上、単なる偶然か、部分的にアイデアを利用しただけなんだろうけど。

そして最後を飾るのが、かの“暴君”ネロ…と言っても、ローマで起こった大火事の犯人として、当時はマイノリティだったキリスト教徒に濡れ衣を着せて殺しまくった事により、後世のキリスト教徒たちからアンチ・キリストとして扱われたのが大きいようで。
統治者としての才能や自覚に欠けていたのは間違いないだろうけど、若さと経験不足ゆえの無思慮って部分もあるだろうし。そういうマイナス要素を無視して、“若い”だの“新鮮”だのといったイメージ先行のプラス要素だけを見て支持するような悪しき性向は、昔も今も変わってないなぁ…。
カリギュラという失敗例があるんだから「若輩者に過剰な権力を与えるのはヤバい」という判断が働きそうなものだけど、スキピオ・アフリカヌスのような“早熟の天才”という例外もこれまでに無かったわけじゃないのが、悩ましいところか。

さて、ちょうど巻数としては折り返し地点だし、節電強化期間が終わったから図書館へ入り浸る必要も無くなったわけで、ひとまず今年はここまでにしておいて、つづきは来年の夏に取っておくかね?
今更だが、新聞の書評欄にあったベストセラーランキングを見て、すでに伊藤計劃&円城塔の「屍者の帝国」が発売されていることを知り、そっちを読もうかと思案中…でも、新書版は高いよなぁ(苦笑)。

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