最初に読んだ菅浩江作品が「博物館惑星」なので、どうしてもそのイメージを引きずってしまうのだが、あの読後感は長編(正確には、同シリーズ短編の積み重ねと言うべきだけど)だからこそ得られるものであって、一発ネタの短編で同レベルの満足感を得るのは、なかなか難しいのだろう。
収録作の中では「千鳥の道行」あたりが、芸術を題材にSFとミステリのテイストを加えたという意味で、博物館惑星に近い作風と言えるのだが、やはり1回きりの使い捨てキャラでは愛着を持ちにくいのがネックになっている。
つーか、これって博物館惑星シリーズに含めても特に問題ないような・・・まあ掲載誌の問題とかあるんだろうけど。
表題作「カフェ・コッペリア」は、チューリング・テストを恋愛相談の場で行なうというワン・アイデアもの。
人付き合いを維持するためだけに、空疎な言葉のやり取りを続けるのがつらい・・・という心境に、心から同意せざるを得ない。俺も人付き合いは苦手だからな。
これだけ情報伝達の量と速度が向上している今の時代、心情を正確に伝えられる新たな言語を作るべきだと思うんだが・・・アダムの言語とか、「アイの物語」みたいなSF架空言語を何とか実用化できないモンかね?
「エクステ効果」は、いまSFマガジンで不定期連載されているシリーズと同じく、言うなれば美容SF。博物館惑星の影を追い求める身としては、正直あまりこっち方面に走って欲しくはないと思っていたのだが、ミステリ風の謎かけから予想外の真相に至る流れは、博物館惑星に通じるものがあった。
「笑い袋」は、言うなれば老人介護SF(笑)・・・まあ現実の少子高齢化を思えば笑い事じゃないんだけどさ。
「進化の設計者」でもユビキタス環境で孤独死する老人が描かれてたけど、今後はこういう時代背景を踏まえたSFが国内では増えてくるのかね? 911以降、テロとかカタストロフ以後を描くアメリカSFが増えたのと同じで、未来は暗そうだな。
まあ、この作品自体はいちおうハッピーエンドなんだけどね。
どのカテゴリにも含まれないマイナージャンルの話題は、「日記」カテゴリに回すことにする。
0 件のコメント:
コメントを投稿